房室弁交差( criss-cross heart)

(定義)

 房室弁交差 criss-cross heartは房室結合様式によって一致型(concordant)と不一致型(discordant)が見られる。
 心臓血管造影法の正面像において右房→心室の血流と左房→心室の血流が交差して見えることから「criss-cross(十字架型)heart」の名が付けられた。
 concordantとdiscordantの発生頻度は5:1で concordantが多く発生する。

(解剖)

・一致型房室弁交差 concordant crossing

完全大血管転位、または両大血管右室起始に合併して生じる。
心房-心室のつながりは正常である。
右房は三尖弁を介して右室(左室のさらに左前上方)につながり、左房は僧帽弁を介して左室(右室の右後方)につながっている。
僧帽弁の位置は低く、三尖弁の後方で交差している。

・不一致型房室弁交差 discordant crossing

多くは修正大血管転位を合併する。
右房は後下方の僧帽弁を介して左後方の左室につながり、左房は右前方に向かう三尖弁を介して右前方の右室につながる。
本症の両心室は前後ないし左右の配列で房室弁が交差し、上下の配列はない。

(合併症)

 心室中隔欠損は必発。大部分が完全大血管転位症、両大血管右室起始、修正大血管転位症のいずれかを合併する。その他右室低形成や房室弁騎乗を高率に合併する。
 特徴的な心室配列を呈する近似疾患として「上下の心室配列 supero-inferior ventricle」があり、concordantの約半数が上下の心室配列を合併するが discordantは合併しない。(上下の心室配列に関しては別項目を参照してください。)

(臨床症状)

 criss-crossの臨床症状は合併心奇形の症状を呈する。完全大血管転位、両大血管右室起始、修正大血管転位を合併するため、説明はそれら合併症の臨床症状を参照してください。

(手術適応)

右室の容量が正常の70%以上であれば心内修復術が可能であるが、ほとんどが容量70%以下の右室低形成を合併しているため、心内修復術が困難である。
 一般的には Fontan型手術が適応となる。
※陽平の場合は右室の容量は70%以上ありましたが、三尖弁と僧帽弁の腱索が、起始する乳頭筋を共有していたために心内修復はできずにフォンタン型手術(グレン&TCPC)を行いました。

(引用文献)

高尾篤良、門間和夫、他:臨床発達心臓病学(中外医学社)

文責:山田かおる


※このページはただの主婦が子どもの病気をまとめるために作成したものです。
※病気に関する質問・説明は最寄りの心臓専門医にお願いいたします。


トップページへ




アクセス解析 SEO/SEO対策